BTOメーカー・サイコムが放つ静音モデル「Silent-Master」シリーズは、“Master”の名にふさわしい、サイコムならではのこだわりが詰まった静音パソコンとして、高い人気を誇っています。
現在、静音性とパフォーマンスを高いレベルで両立させる「Silent-Master NEO」と、ファンレスのCPUクーラーと低電圧版CPUを組み合わせることで究極の静音を実現する「Silent-Master PRO」といった2つのモデルがラインナップされていますが、さらなる静音を追求すべく、サイコムオリジナルの超静音ビデオカード「Silent Master Graphics」が組み合わされたことで、より一層の注目を集めています。
そこで今回は、サイコムの静音モデル「Silent-Master」シリーズの概要を中心に、「Silent Master Graphics」の開発秘話などを紹介していきましょう。
目次
1.Noctua製CPUクーラーとの出会い
創業当時から“静音に特化したパソコンづくり”を目指していたというサイコムの河野社長ですが、「Silent-Master」シリーズが“Master”の名にふさわしいモデルとして頭角を現したのは、Noctua製CPUクーラーとの出会いが大きかったと振り返ります。
高い静音性と冷却性能を備えたNoctua製CPUクーラーこそが静音パソコンに必須のパーツであると考え、Computex Taipeiの会場にて直接交渉。それ以来、サイコムといえばNoctuaと言っても過言ではないくらい、同社のパソコンを支えるキーパーツとなっています。
Noctua製CPUクーラーを採用した「Silent-Master」は、当時人気の高かったAntec製の静音PCケース「P100」が組み合わされました。この二つの組み合わせだけでも、十分な静音性が期待できますが、そこで止まらないのがサイコムのこだわりです。PCケースに標準搭載されている吸気・排気ファンもNoctua製のケースファンに変更。
そのためコストは大きく跳ね上がりましたが、「それがかえって良かった」と同社プロダクトマネージャーの山田さんは証言します。「中途半端では意味がない。そこまでやらなければ逆に価値が下がりますから」。
2.公的第三者機関の無響室で徹底検証
ハードウェア面では万全の体制が整った「Silent-Master」ですが、それでも山田さんは満足しませんでした。「当時の静音パソコンは、ある意味、言ったもの勝ちの世界でした。メーカーが静音と言えばそれだけで静音パソコンになる。それはちょっとおかしいと思ったので、静音性の高さをしっかり計測して、その数値をホームページに公開すれば良いじゃないかと考えました」。
そこで山田さんは、「Silent-Master」を公的第三者機関の無響室に持ち込み、静音性と冷却性能を徹底的に検証しました。ただ数値を出すだけではなく、ファンの向き、数、位置、口径、回転数などを変更しながら、あらゆるパターンを検証。そこから、静音性と冷却性能を高いレベルで両立する組み合わせを生み出したと言います。
「Noctuaを使っているから静かで冷えるのは当たり前なんて思われがちですが、本当に大切なのは、そこに至るまでのバックボーンなんです」という河野社長。「組み合わせを少し変えるだけで、数dBの違いが出てきます。それをどこまで突き詰められるか。そのしつこいまでのクラフトマンシップこそがサイコムなのです」。
徹底した検証によって導き出された静音性と冷却性能、そして、そのエビデンスをきっちり示すことによって、“静音パソコンといえばサイコム”という不動の評価を獲得するに至ったのです。
3.NEO、そしてPROへとさらなる進化を遂げる
静音パソコンとして多くの支持を集めた「Silent-Master」ですが、最初の大きな変化は、PCケースをCoolerMaster製の「Silencio S600」に変更してリリースされた「Silent-Master NEO」シリーズの登場です。
独自に検証を重ねながら、エアフローによる静音性と冷却性能のバランスを究極に突き詰めた空冷の静音パソコン「Silent-Master NEO」は、2019年10月に登場して以来、静音性と冷却性能はそのままに、最新モデルでは第14世代のIntel Core i5-14600Kを搭載するなどのモデルチェンジを重ね、依然として高い人気を誇っています。
そんな「Silent-Master」シリーズがさらなる変化を遂げたのが「Silent-Master PRO」。河野社長が「ファンレスのCPUクーラーを使いたかった」と語る通り、「Silent-Master PRO」もNoctua製CPUクーラーが開発のきっかけとなっており、末尾に「T」がつく低電圧版CPU「Intel Core i7-13700T」を組み合わせることによって実現されたモデルとなっています。
ファンレス仕様のため、PCケース内部のエアフローなどが徹底的に突き詰められているだけでなく、サイコム独自のチューニングによってパフォーマンス向上が図られているのが特徴。そして、そのための検証もかなりこだわったものとなっています。
Intel Coreプロセッサーの消費電力には、通常状態の「PL1」とTurbo Boostなどによる最大値を示す「PL2」という2つの値が設定されています。この数値を変更することによって、クロック周波数が変化するため、「Silent-Master PRO」では、この「PL1」の値をチューニング。標準では35Wの「PL1」の値を引き上げることによって、低電圧版CPUを使いながらも、高いパフォーマンスを引き出し、性能面を犠牲にすることなく、究極の静音性と冷却性能を実現しています。
「CPUクーラー自体は既製品なので、誰でも利用することができます。しかし、それに対応する低電圧版CPUは非常に入手困難ですし、たとえ入手できても、そのまま利用したら、性能面で期待外れのものになると思います。PLの値を変更してまでもTシリーズのCPUを利用する。これこそがBTOパソコンの魅力ですし、サイコムならではのこだわりなのです」と河野社長は自信を覗かせます。
4.超静音ビデオカード「Silent Master Graphics」
「Silent-Master PRO」の登場によって、まさに“究極の静音”を突き詰めたサイコムにとって、最後に残ったのがビデオカードの問題。
「我々がいくら努力して静音性を突き詰めても、ハイエンドのビデオカードを入れた瞬間、もはや静音パソコンではなくなってしまう」という山田さん。しかし、基本的にビデオカードは冷却ファンが一体となったパーツであることから、「ビデオカードを静音化するためには、我々が自分でビデオカードを作るしかないという結論に達しました」。
ちょうどサイコムがビデオカードの静音化を模索しているのと時を同じくして、ASUSからNoctuaとコラボした静音ビデオカードが登場しました。「さすがASUSさん、良いもの作るなぁ!と思いました」と当時を振り返る山田さん。ASUSのビデオカードに大きな刺激を受けながら、サイコムオリジナルのビデオカードづくりが進められました。
オリジナルの静音ビデオカードを作るにあたり、まず最初に冷却ファンを選定。口径だけでなく高さにも注目し、さまざまな組み合わせで検証が進められました。その結果、「GeForce RTX 4060Ti 8GB/16GB」には口径90mm×高さ14mmの冷却ファン2基、「GeForce RTX 4070」には口径120mm×高さ25mmの冷却ファン2基を、ものづくりに定評のある長尾製作所が手掛けたオリジナルファンカバーに組み込むことによって作り出されたのが、サイコムオリジナル超静音ビデオカード「Silent Master Graphics」です。
さらに検証を重ねることで、静音性を損なわずにGPUの性能をきっちり引き出せる最適な回転数を算出。静音化にこだわるサイコムのクラフトマンシップが存分に発揮された「Silent Master Graphics」には、「GeForce RTX 4060Ti 8GB」、「GeForce RTX 4060Ti 16GB」と「GeForce RTX 4070」がラインナップされており、「Silent-Master NEO/PRO」シリーズに標準で搭載されているほか、カスタマイズすることでほとんどのモデルに組み合わせることができます。
「Silent Master Graphics」の登場によって、「後はPCケースを作るぐらいしか残っていないのですが、おそらくそこにはいかないと思います」という河野社長。
とはいえ、現在の「Silent-Master NEO/PRO」が最終形というわけではなく、「今後、新しいCPUやビデオカードが登場すれば、それにあわせてモデルチェンジを繰り返していきます」と、さらなる進化を約束。性能面でも妥協のない静音パソコンをお求めの方は、サイコムが誇るクラフトマンシップの結晶ともいえる「Silent-Master」シリーズをぜひ注目してみてください。
5.「Silent-Master」シリーズのラインナップ
5-1.静音と性能を両立する「Silent-Master NEO」
「Silent Master NEO」シリーズは、エアフローによって冷却性能と静音性を高いバランスで両立し、性能面でも文句なしの静音パソコン。Noctua製CPUクーラーと冷却ファンを採用したこだわりの構成で、PCケースにも静音性で定評がある「CoolerMaster Silencio S600」を採用しています。
現行モデルでは、ビデオカードに、Noctua製ファンを長尾製作所で製造された専用設計のオリジナルファンカバーに組み込んだサイコムオリジナル超静音空冷ビデオカード「Silent Master Graphics」のGeForce RTX 4060Tiモデルを標準搭載。ゲーム用途でも十分に利用できるパフォーマンスが期待できます。
「Silent Master NEO」シリーズには、第14世代Intel Coreプロセッサー採用モデルだけでなく、AMD Ryzen採用モデルもラインナップ。ミニタワー型のコンパクトモデルなど、幅広い選択肢も魅力となっています。
「Silent-Master NEO Z790/D5」の標準構成 |
CPU:Intel Core i5-14600K マザーボード:ASRock Z790 Pro RS(Intel Z790チップセット) メモリ:DDR5-4800 16GB(8GB×2) ストレージ:1TB SSD ビデオカード:Sycom Silent Master Graphics RTX4060Ti 8GB(GeForce RTX 4060Ti) OS:Windows10 Home(64bit) 外形寸法:幅209×奥行き478×高さ470.5mm |
5-2.究極の静音モデル「Silent-Master PRO」
「Silent Master PRO」シリーズは、サイコムが放つ究極の静音PC。Intel製の低電圧版CPUとファンレス仕様のNoctua製CPUクーラーを組み合わせ、PCケースにはデザイン性の高い「Fractal Design Define 7 Compact」が採用されています。
サイコム独自のチューニングにより、低電圧版のCPUでも本来の性能以上のパフォーマンスアップが図られているほか、ビデオカードには、Noctua製ファンを長尾製作所で製造された専用設計のオリジナルファンカバーに組み込んだサイコムオリジナル超静音空冷ビデオカード「Silent Master Graphics」のGeForce RTX 4060Tiモデルを標準搭載。静音性だけでなく、PCゲーム用途でも利用できるパフォーマンスにも注目です。さらに、電源ユニットもセミファンレス仕様で、アイドル時はほぼ無音とも言える静音性を誇ります。
なお、「Silent Master PRO」シリーズには、MicroATXを採用したミニタワー型の「Silent-Master PRO Z790-Mini/D4」もラインナップされています。
「Silent-Master PRO Z790/D5」の標準構成 |
CPU:Intel Core i7-13700T マザーボード:ASRock B760M-ITX/D4 WiFi(Intel B760チップセット) メモリ:DDR5-4800 16GB(8GB×2) ストレージ:1TB SSD ビデオカード:Sycom Silent Master Graphics RTX4060Ti 8GB(GeForce RTX 4060Ti) OS:Windows10 Home(64bit) 外形寸法:幅210×奥行き427×高さ474mm |
6.まとめ
今回は、BTOメーカー・サイコムのこだわりが詰まった静音パソコン「Silent-Master」シリーズの歴史や魅力、さらに、静音性を突き詰めたビデオカード「Silent Master Graphics」についてを紹介しました。
静音性の高いパーツを厳選しているだけでなく、公的第三者機関の無響室での検証など、トコトンまで突き詰めていく姿勢こそが、サイコムが標榜するクラフトマンシップであり、超静音ビデオカード「Silent Master Graphics」は、まさにその集大成と言えるかもしれません。
静音性はもちろん、冷却性能やパフォーマンスにもこだわった静音パソコンをお探しの方は、サイコムの「Silent-Master」シリーズに、ぜひ注目してみてください。
北海道の牧場で馬と戯れる日々を経て、パソコン雑誌やWEBニュース媒体の編集長を歴任する。Athlonに心奪われ、Xeonに絶対の忠誠を誓ったのも今や昔。現在は、編集業を中心に、原稿執筆からカメラマン、果てはアニメの宣伝プロデューサーまで、本業不明の生活を送る。ユーザーの心をがっつり掴む各種オウンドメディアを運営中。 プロフィールはこちら
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