デュアル水冷にコンパクトなキューブ型モデルが登場!SILVERSTONEのPCケースが生み出した「Hydro Cube」

BTOメーカー・サイコムのフラグシップモデルとして、ハイエンドゲーマーから高い支持を集める「Hydro(ハイドロ)」シリーズは、CPUのみならずGPUも独自の技術によって水冷化することによって高い冷却性能を発揮し、高負荷時でも安定したパフォーマンスが期待できます。

ハイエンドゲーマー向けとして登場した「Hydro」シリーズですが、現在ではワークステーション向けとしても展開されており、映像編集や3DCG制作、AIなど活躍の場をさらに広げています。そして、そんな「Hydro」シリーズに加わった新たなラインナップが「Cube」モデルです。キューブ型のPCケースに、デュアル水冷システムを組み込むことによって、コンパクトながらも高いパフォーマンスを発揮。「Hydro」シリーズの新たなステージとして注目が集まっています。

「Hydro Cube」はいかにして誕生したか?

そこで今回は、「Hydro Cube」がいかに誕生したかについて、サイコム プロダクトマネージャーの山田正太郎さんと、「Hydro Cube」のベースとなるPCケースを生み出したSILVERSTONE JAPAN 取締役のJeff Chenさんにお話を伺ってみました。

左:SILVERSTONE JAPAN 取締役 Jeff Chenさん 右:サイコム プロダクトマネージャー 山田正太郎さん

山田さんが「Hydro Cube」に使用されているSILVERSTONE製PCケース「SUGO 17(SST-SG17)」と出会ったのは、「COMPUTEX TAIPEI 2023」の会場。SILVERSTONEブースに、発売前の試作機として展示されていた「SUGO 17」を見た山田さんは「ちょっと面白いなとは思ったんですけど、特にこれで何かができるというインスピレーションはわきませんでした」と当時を振り返ります。

「けっこうプッシュはされたんですけど、ちょっと面白いかなくらい(笑)」(山田さん)。

そんな「SUGO 17」が2023年秋に発売された後、Jeffさんはサイコムを訪問し、あらためてアピール。Jeffさんの「マイクロATXでデュアル水冷ができるケースです」という言葉に、「それなら面白いかも」と山田さんの心が動いたそうです。

「マイクロATXでデュアル水冷って難しいんですよ。それがさらにコンパクトにできるということで、これはちょっと料理のしがいがあるなと」(山田さん)。

SILVERSTONE製PCケース「SUGO 17(SST-SG17)」
Jeffさん「我々は“すごいな”と呼んでいます」

かつてサイコムには「Hydro Mini」として、マイクロATXモデルもラインナップされていましたが、あまり人気は高くなかったそうです。「Hydroを買うようなお客さんは大きくて拡張性のあるモデルを選ばれる傾向にあったこともあり、ちょっと小さくなった程度の『Hydro Mini』はあまり注目されませんでした」という山田さん。
しかし、「同じマイクロATXと言っても、ちょっと話が違う。横に並べてみればわかるのですが、明らかに大きさが違います。これなら勝負できるのではないか」との考えから、「Hydro Cube」の開発を決意したそうです。

しかし、実際に開発を進めていくと、大きな壁が立ちはだかります。「G-Master Hydro Z790 Cube」の標準構成では「NVIDIA GeForce RTX 4070 Ti」のビデオカードが水冷仕様で搭載されていますが、ワークステーション向けの「Lepton Hydro WSZ790 Cube」では、「NVIDIA GeForce RTX 4080 SUPER」のビデオカードを水冷仕様で搭載することが予定されていました。

「4070 Tiとか4070 Ti SUPERであれば、2スロット占有なのであまり問題なかったのですが、4080 SUPER以上になってくると4スロット近くを占有してしまいます。そうなると、CPUクーラーのラジエーターを組み込むスペースがなくなってしまうのです」(山田さん)。

ウルトラハイエンド向けである「Hydro」シリーズの場合、ビデオカードは最高スペックのもの、現在で言えば「GeForce RTX 4090」モデルを組み合わせられることが前提となっています。しかし、「GrForce RTX 4080 SUPER」以上のビデオカードが組み込めないのでは、まったく意味がないのです。「Hydro」の名前を冠する以上、中途半端な妥協はできません。そんな窮地に陥った山田さんを救ったのはJeffさんの一言でした。

「実はSILVERSTONESTONEに薄型の水冷CPUクーラーがあります」(Jeffさん)。

「え、そんなのあるの?」。驚いた山田さんですが、実際にものを見てみると、冷却ファンもラジエーターも薄くなっており、4スロット占有のビデオカードを搭載しても、問題なくCPUクーラーを取り付けることができたのです。これによって、製品化に向けての大きな一歩が踏み出されました。

「実はSILVERSTONEは、結構ニッチな製品が多い」と話すJeffさん。特に、SFF(スモールフォームファクター)にこだわった製品づくりも進めており、冷却も含めて、小型・薄型の製品を昔から作っていたそうですが、「営業、マーケティングが下手な会社なので、なかなか認知度が上がらなくて」と苦笑いを浮かべます。

「小さい筺体だからそれなりのスペックで問題ないという気持ちはまったくなくて、むしろ小さいからこそ、最上位の『RTX 4090』を搭載したい。それをロマンと言うと言いすぎかもしれませんが、それじゃないと小さくする意味がないと思っています」という山田さん。実際、「SUGO 17」に対する評価も高く、「CPUのラジエータを天板、ビデオカードのラジエータを側面に取り付けて、そこから吸気して、熱くなった空気をまとめて背面から排気する。冷却のメカニズム、エアフローがすごく考えられている」と絶賛します。

「Hydro Cube」の開発において、もっとも時間が掛けられているのは、冷却に関する検証。天板と側面から吸気し、背面に排気するというのも、さまざまなパターンでの検証によって導き出された結果であり、そこにたどり着くまでにはかなりの試行錯誤があったそうです。

また、BTOパソコンとしては、カスタマイズ性も無視できないポイントです。標準構成は決して完成形ではなく、CPUやビデオカードの変更だけでなく、メモリやストレージを最大レベルまで搭載することも考えておく必要があるのです。「ストレージ周りだと、マザーボード上のM.2スロットのほかに、3.5インチベイが1個と2.5インチベイが2個あるのですが、それを使いこなすためには、別のケーブルとかアダプタを使う必要があったりするのが、ちょっと大変だったところですね」と山田さんは振り返ります。ただし、一般的なキューブ型PCケースが小さいSFX電源を採用することが多いのに対し、「SUGO 17」は奥行き14cmに限られるものの、通常のATX電源が使用できるのは大きなメリットと付け加えます。

今回リリースされた「Hydro Cube」は、「G-Master Hydro Z790 Cube」も「Lepton Hydro WSZ790 Cube」もいずれもIntelフォームファクターですが、今後はAMDフォームファクターの製品も展開していきたいと話す山田さん。市場の反応も上々と、手応えを感じつつも、実は心残りもあると打ち明けます。

「コストなどの問題でメモリがDDR4になってしまったのがやや残念なポイント。そのあたりも今後は進化させていきたい」(山田さん)。

「Hydro」の名に恥じない製品づくり

最近のトレンドをみると、ハイエンド向けのパソコンは、どちらかというと大型筺体のほうが小型筺体よりも人気の傾向にあります。その中で、あえてキューブ型というコンパクトな形状にチャレンジした「Hydro Cube」ですが、「Hydro」の名はサイコムにとって非常に大切なブランド。その意味でも、「Hydro Cube」は、「Hydro」の名前に恥じない仕上がりになっていると山田さんは胸を張ります。

「デュアル水冷だから『Hydro』というわけでは決してありません。実際のところ、デュアル水冷の製品はすべて『Hydro』となっていますが、やはり『Hydro』という名前にふさわしい製品を作っていくのが自分たちの使命だと思っています」(山田さん)。

「SILVERSTONEさんの製品で言えば、『RM600』という6Uのラックマウントケースがあるのですが、それに水冷の「RTX 4090」を2本搭載した、「AMD Ryzen Threadripper」ベースの、トリプル水冷ができないかと思っているんですよ。もうこれは完全に法人向けのワークステーションですが」といった構想を明かす山田さんに、「それは自動車が買えるくらいの値段になりそうですね」と突っ込むJeffさん。「実際に売れるかどうかは微妙なところですが」という山田さんですが、「我々のようなメーカーは、ほかがやらないこと、ほかがやれないことをやっていかないといけないんです」と強い決意を示しました。

そういった夢とは別に、今後も、新しいGPUが登場すれば、そのタイミングあわせて、ハイエンドモデルを水冷化した「Hydro」をリリースしていきたいという山田さん。「おそらく皆さんも期待していらっしゃると思うので」と、従来通りの姿勢を続けることを約束しつつ、ハイエンドゲーミングPCとしての「Hydro」だけではなく、ワークステーション向けのラインナップも拡充していきたいとの展望を明かします。

「我々が大手に勝つためには、製品力を上げるしかありません。製品力によって差別化を図り、サイコムならではの持ち味、切れ味を発揮していきたい」(山田さん)。

一方、Jeffさんは、「今後、ビデオカードの消費電力がさらに大きくなることを考えると、CPU用とビデオカード用で電源を2つ搭載することになるかもしれない」と予想。SILVERSTONESTONEでは、パソコンを安定して動作させるために、電源の設計そのものを見直しているとのことです。実際、サイコムのBTOパソコンの多くはSILVERSTONEの電源ユニットが採用されています。サイコムのクラフトマンが自信を持って推奨するSILVERSTONEの技術力も、引き続き要注目です。

「Hydro Cube」シリーズの製品紹介

「Hydro Cube」には、先述の通り、ハイエンド向けゲーミングPCとなる「G-Master Hydro Z790 Cube」と、プロフェッショナル向けのワークステーションモデル「Lepton Hydro WSZ790 Cube」といった2モデルがラインナップされています。

2つのモデルの違いは、ビデオカード、メモリ容量、電源容量、そしてOSです。
「G-Master Hydro Z790 Cube」は「NVIDIA GeForce RTX 4070 Ti」のビデオカード、「Lepton Hydro WSZ790 Cube」は「NVIDIA GeForce RTX 4080 SUPER」のビデオカードを、それぞれ水冷仕様で搭載。メモリ容量は「G-Master Hydro Z790 Cube」が16GBであるのに対し、「Lepton Hydro WSZ790 Cube」は32GBとなっています。

もちろん、両者の違いは標準構成のスペックであり、カスタマイズによって変更することも可能ですが、「Lepton Hydro WSZ790 Cube」はかなり上級者を対象とした構成になっていることがわかります。

G-Master Hydro Z790 Cube

白いキューブ型の筺体が特徴的なハイエンドゲーミングPCが「G-Master Hydro Z790 Cube」です。CPUとビデオカードを水冷ユニットで冷却するデュアル水冷が最大の特徴で、標準構成では、「Intel Core i7-14700K」に「NVIDIA GeForce RTX 4070 Ti」搭載ビデオカードの組み合わせを採用。最新のPCゲームを安定したパフォーマンスで楽しむことができます。

もちろんカスタマイズによって、さらにハイエンドのビデオカードを搭載することも可能。ハイエンドゲーミングPCは大きくて無骨というイメージを刷新する、ファッショナブルでコンパクトなデザインでありながら、高いパフォーマンスが期待できる大注目の1台となっています。

※カスタマイズで黒ケースに変更可能
G-Master Hydro Z790 Cube 標準構成
フォームファクタ:Micro ATX
CPU:Intel® Core™ i5, i7, i9各種(LGA1700)
マザーボード:Intel Z790チップセット
メモリ:DDR4-3200 16GB(8GB×2)
ストレージ:超高速 NVME SSD 1TB
グラフィック:NVIDIA Geforce RTX4070Ti 12GB
OS Windows11:Home(64bit)
外形寸法:幅202×奥行き451×高さ286mm

G-Master Hydro Z790 Cube 製品ページ

Lepton Hydro WSZ790 Cube

「hydro Cube」シリーズでワークステーション向けとして開発された「Lepton Hydro WSZ790 Cube」は、コンパクトサイズでありながら、究極のパフォーマンスを発揮。標準構成で、「Intel Core i7-14700K」に「NVIDIA GeForce RTX 4080 SUPER」搭載ビデオカードの組み合わせを採用。デュアル水冷によって、高い負荷の掛かる作業でも抜群の安定性が期待できます。

昨今は、ゲームだけでなく、クリエイティブ方面でもビデオカードの重要性は非常に高まっています。特に自宅で作業を行う方にとってはコンパクトサイズの筺体は非常にありがたいポイント。コンパクトでありながらもハイエンドのビデオカードを利用できる「Lepton Hydro WSZ790 Cube」は、ワークステーションの新たな可能性を引き出してくれる1台に仕上がっています。

※カスタマイズで白ケースに変更可能
Lepton Hydro WSZ790 Cube 標準構成
フォームファクタ:Micro ATX(ミニタワー)
CPU:Intel Core i7-14700K
マザーボード:ASRock Z790M PG Lightning/D4[Intel Z790chipset]
メモリ: 64GB[32GB*2枚]DDR4-3200 Dual Channel
ストレージ:Crucial T500 CT1000T500SSD8[PCI-E GEN5 SSD 1TB]
グラフィック:NVIDIA GeForce RTX4080 SUPER 16GB
OS:Windows 11 PRO(64bit)
外形寸法:幅202×奥行451×高さ286mm

Lepton Hydro WSZ790 Cube 製品ページ

BTOパソコン売れ筋ランキング

(8月1日~8月31日)

  • 1位
    1位G-Master Spear X670A
    Zen5アーキテクチャ採用のAMD Ryzen 9000シリーズを搭載するミドルタワー型ゲーミングPC。高性能と高拡張性を実現したゲーマー向けハイエンドモデルです。
  • 2位
    2位Silent-Master NEO B650A
    こだわりのNoctua製空冷CPUクーラーを採用し、エアーフローと静音性のバランスを極めた静音PC。AMD Ryzenプロセッサを搭載するATXミドルタワー型モデル。
  • 3位
    3位G-Master Velox II Intel Edition
    高品質なパーツを採用した納得の標準構成と厳選されたオプションパーツでシンプルなカスタマイズが楽しめる新機軸のゲーミングPC!
    定番のインテル® Core™ プロセッサ搭載モデルです。
  • 4位Radiant GZ3500Z790/D5
    インテル® Core™ プロセッサとDDR5メモリを搭載するATXミドルタワー型モデル。BTOならではのカスタマイズの幅が広いスタンダードなモデルです。
  • 5位Radiant GZ3500X670A
    Zen5アーキテクチャ採用のAMD Ryzen 9000シリーズ搭載ATXミドルタワー型モデル。BTOならではのカスタマイズの幅が広いスタンダードなモデルです。
  • 6位G-Master Velox II AMD Edition
    高品質なパーツを採用した納得の標準構成と厳選されたオプションパーツでシンプルなカスタマイズが楽しめる新機軸のゲーミングPC!コストパフォーマンスに優れたAMD Ryzen 5000シリーズ搭載モデルです。
  • 7位G-Master Spear Z790/D5
    DDR5メモリとインテル® Core™ プロセッサを採用するミドルタワー型ゲーミングPC。
    高性能と高拡張性を実現したゲーマー向けハイエンドモデルです。
  • 8位G-Master Hydro X670A Extreme
    Zen5アーキテクチャ採用のAMD Ryzen 9000シリーズを360mm大型ラジエーター搭載水冷ユニットで強力に冷却。更にサイコム独自に水冷化したNVIDIA製高性能GPUを組み合わせたデュアル水冷PC!
  • 9位Premium-Line X670FD-A
    いいものを、永く。標準2年保証、無償オーバーホールなど末永くご愛用いただくためのアフターサービスも充実したサイコムが提案する新たなPCのカタチ。その名は、Premium-Line
  • 10位Lepton Hydro WSX670A
    AMD Ryzen 9000シリーズとGeForce RTX4000シリーズの冷却に水冷方式を採用。冷却性能と静音性を高次元で両立し現場の即戦力としてクリエイターを支援する高性能ワークステーション。