3DCGの制作を検討する際に、最初に悩むのが「どのソフトを利用すればよいか?」です。3DCGを制作できるソフトは多数あり、プロフェッショナルの現場でも使用されるソフトが、個人においても手軽に利用できる環境が整いつつあります。
今回紹介する「Cinema 4D」は、高い機能性と互換性を持ち、様々なジャンルの3DCGに対応できる統合型3DCG制作ソフトです。直感的な操作性の扱いやすいインタフェースが特徴で、特にモーショングラフィックの制作で強みを発揮します。
そんな「Cinema 4D」を快適に操作するためにはどんなパソコン、どんなスペックが必要なのか。本記事では、「Cinema 4D」の基本的な特徴とともに、最適なパーツ構成を紐解いていきます。
目次
1.3DCG制作ソフト「Cinema 4D」とは?
1-1.「Cinema 4D」の特徴
「Cinema 4D」は、ドイツのMAXON Computer社が開発した、モデリング、アニメーション、カメラワーク、ライティング、レンダリングなど、3DCG制作の全工程を1つのソフトで完結できる統合型3DCG制作ソフトウェアです。
直感的な操作性が魅力で初心者でも短期間で基本を学べる一方、柔軟性も高く、上級者向けの高度な機能も備えています。
また、強力なモーショングラフィックス機能を搭載。MoGraphと呼ばれるモジュールによって複雑なモーショングラフィックスを簡単に制作できるほか、キネティックタイポグラフィやインフォグラフィックスなどの表現にも優れています。
さらに、「Photoshop」や「Illustrator」、「AfterEffects」などのAdobe製品とのデータ互換性が高く、特に「After Effects」とはシームレスに連携することができます。
1-2.「Cinema 4D」の主な機能
「Cinema 4D」は統合型3DCG制作ソフトウェアであり、非常に多くの機能を備えているのが特徴です。
「モデリング」に関しては、様々なモデリングツールを備え、ポリゴンモデリングやNURBSモデリングが可能。「アニメーション」では、キャラクターアニメーションに適した機能を搭載しており、ボーンベースのキャラクターリグ作成ができます。また、MoGraphと呼ばれるモーショングラフィックス機能が強力で、複雑なアニメーションを簡単に作れる点も大きな特徴となっています。
さらに、「カメラワーク」においても、仮想カメラを自在に操作でき、映画のようなカメラワークが可能。様々な種類のライトを配置し、リアルな照明設定ができる「ライティング」は、グローバルイルミネーションにも対応します。
そして、高速でリアルな「レンダリング」エンジンを搭載しており、特に速度面においては業界でも高く評価されています。Adobe製品との連携については前述しましたが、他の3DCGソフトのデータ読み込みに対応している点も注目です。
1-3.「Cinema 4D」が使用された主な作品
「Cinema 4D」は、世界中の多くの企業や制作会社など、プロフェッショナルの現場でも活用されています。
たとえば、映画『約束のネバーランド』の3DCG制作に使用されているのをはじめ、『アイアンマン3』では、2D/3D視覚効果ショットの制作ツールとして、ゲーム『Marvel's スパイダーマン 2』では、テクスチャリングとカメラワークに、そのほか『くもりときどきミートボー』など数多くの作品に使用されています。
2.「Cinema 4D」に最適なスペックを探る
2-1.「Cinema 4D」の動作環境
「Cinema 4D」は、Windows/macOS/Linuxに対応していますが、Window版の動作環境は下記のようになっています。
CPUに関しては64ビットかつAVX2対応であることが求められますが、「AVX(Advanced Vector Extensions)」はCPUに搭載されている命令セットのひとつで、「AVX2」は、Intel製であれば第4世代以降、AMD製であればRyzen以降のCPUに搭載されています。また、メモリは最低16GBで、24GB以上が推奨されています。
ビデオカードについては、ややわかりにくい表記となっていますが、「NVIDIA Maxwell GPU」は「GeForce GTX 700(一部)/900」シリーズ、「AMD Polaris (AMD GCN 4)」は「Radeon RX 400/500」シリーズ、「Intel Kaby Lake」は第7世代Coreプロセッサの内蔵グラフィックとなります。またVRAMについては、4GB以上(8GB以上推奨)となっています。
対応OSがWindows 10以上となっていることからもわかるとおり、あまり古いパソコンでは使用できないと考えたほうがよいかもしれません。
2-2.CPUはマルチコア&高クロックを推奨
「Cinema 4D」は、マルチコアに最適化されているので、CPUはコア/スレッド数が多いほうが処理も快適になります。CPUレンダリングを行う場合は、特にマルチスレッド性能が重要となります。
その一方で、シングルスレッド処理の機能も多数あり、その場合は動作クロックの高いCPUが有利となります。そのため、コア数、動作クロックともに高いIntel Core i7/9やAMD Ryzen 7/9クラスのCPUがおすすめとなります。
2-3.メモリは32GB以上あれば安心
メモリは最低16GB、推奨24GB以上となっているとおり、要求量が高めとなっています。そのため、ゲーミングPCで「Cinema 4D」の利用を考えている方は、増設の必要があるかもしれません。
特に「Cinema 4D」はAdobe製ソフトなどほかのソフトとの連携が特徴となっており、同時並行的に複数のソフトウェアを使用する可能性が高いため、最低でも32GB以上のメモリは確保しておきたいところです。
2-4.GPUレンダリングにはビデオカードが必須
「Cinema 4D」の場合、標準搭載のCPUレンダラーでのみ処理を行うのであればあまり高性能のビデオカードは必要となりませんが、外部GPUレンダラーを利用する場合はビデオカードの性能を重視する必要があります。
「Redshift」や「Octane Render」などのGPUレンダーを利用すれば、GPUの並列処理性能を活かした高速なレンダリングが可能で、リアルタイムでレンダリング結果をビューポートにて確認することができます。またフォトリアルな表現も得意としています。
かつて3DCG制作となると「NVIDIA RTX(旧Quadro)」や「AMD Radeon Pro」といったプロフェッショナル向けのビデオカードが使用されることが多かったのですが、ゲーミング用途の「GeForce」や「Radeon」でも問題なく使用できます。ただしVRAM容量についてはできるだけ大きいものを使ったほうが快適な処理が期待できます。
なお、「Cinema 4D」にはCPUとGPUをハイブリッドで使用する「ProRender」と呼ばれるレンダラーが搭載されています。この「ProRender」の正式名称は「AMD Radeon ProRender」で、AMDが提供する機能となっています。AMD製のレンダリングエンジンですが、Intel製のCPU、NVIDIA製のGPUでも同じように利用することができます。
2-5.ストレージはSSDを1TB以上
ストレージは、「Cinema 4D」のみを使うのであれば250~500GB程度の容量があれば十分ですが、3DCGやテクスチャなどの素材、別ソフトの使用なども考えて、1TB以上の容量が用意しておきたいところです。
また、快適かつ効率的に作業を行うためには、ストレージのデータ転送速度も重要です。そのため、「HDD」よりも「SSD」を使ったほうがよいですし、可能であれば「M.2 NVMe」のSSDを使用することをおすすめします。
3.「Cinema 4D」の導入コストについて
3-1.ライセンスはサブスクリプション
以前は永続ライセンスも販売されていた「Cinema 4D」ですが、現在はサブスクリプションプランのみの提供となっています。「Cinema 4D」を利用する場合、基本的に「Cinema 4D」単体、「Cinema 4D」+「Redshift」、「Maxon One」といった3つのプランから選ぶことになります。
「Maxon One」はいわゆる統合プランで、「Cinema 4D」のほかに「Forger」、「Red Giant」、「Redshift」、「Universe」、「ZBrush」といったMaxon製のソフトウェアがバンドルされています。「Cinema 4D」+「Redshift」は、「Cinema 4D」と外部レンダラーである「Redshift」がセットになったものです。
このほか、学生や教育者向けの割引プランも用意されています。
3-2.14日間の無料トライアルを利用しよう
「Cinema 4D」は決して安いソフトウェアではありませんので、初めての方はなかなか手が出しづらいかもしれません。そんな場合は、14日間の無料トライアルで利用しましょう。無料トライアルを利用する場合は、まずMaxonアカウント(無料)を作成し、インストールやラインセンス管理を行うMaxon Appをインストールする必要があります。
なお、Maxonが提供する無料トライアルは「Maxon One」を対象としているため、「Cinema 4D」だけでなく、「Maxon One」にバンドルされているソフトすべてを利用することができます。逆に言えば14日経つと、すべてのソフトが利用できなくなりますので注意しましょう。
4.主要3DCG制作ソフトの特徴
3DCGを作成する場合、ソフトウェア選びは非常に重要なポイントです。ここでは「Cinema 4D」をはじめとする主要な3DCG制作ソフトの特徴を紹介します。
■「Cinema 4D」
直感的なインタフェースが特徴で、初心者にも扱いやすく、比較的短期間で習得できるソフトと言われています。特にモーショングラフィックスや広告分野で広く利用されていますが、キャラクターアニメーション、流体シミュレーションといった分野はやや苦手としています。
■「Blender」
無料でありながら、モデリング、スカルプト、アニメーション、レンダリング、コンポジットなど、3D制作に必要な機能を幅広く網羅しており、プロ、アマ問わず多くのユーザーからの支持を集めています。アニメーション、ゲーム、映画、建築ビジュアライゼーションなど様々な分野で活用されていますが、一部の機能が複雑なため、習得に時間がかかると言われています。
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■「Maya」
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5.「Cinema 4D」に最適なおすすめBTOパソコンを紹介
5-1.Lepton Motion Pro Z790/D5
BTOメーカー・サイコムがプロフェッショナル向けとしてラインナップする「Lepton」シリーズの中で、「Lepton Motion Pro Z790/D5」は映像編集に特化したモデルですが、「Cinema 4D」などの3DCG作成にも最適なパーツ構成が採用されています。
標準構成で、動作クロック3.4GHzで20コア/28スレッドの「Intel Core i7-14700K」と、「NVIDIA GeForce RTX 4060」搭載のビデオカード(VRAM:8GB)を組み合わせており、メモリもDDR5-4800を32GB(16GB×2)搭載。VRAM容量の大きいビデオカードや「NVIDIA RTX」シリーズなどにカスタマイズすることで、さらなる快適性を追求することもできます。
Lepton Motion Pro Z790/D5製品ページ
5-2.Lepton Hydro WSZ790
サイコムのフラグシップモデルとなるデュアル水冷の「Hydro」が、プロフェッショナル向けの「Lepton」シリーズにも登場。標準構成で、20コア/28スレッドの「Intel Core i7-14700K」と「NVIDIA GeForce RTX 4080 SUPER」搭載のビデオカード(VRAM:16GB)の組み合わせを採用し、メモリもDDR5-4800を64GB(32GB×2)搭載するなど、ウルトラハイエンドなワークステーションとなっています。
ビデオカードは、ASETEK製の水冷ユニットをサイコム独自の工夫で組み込んでおり、従来の空冷ファンと比べても格段の冷却性能と静音性を実現。CPUの冷却には、同じくASETEK製の最新世代高性能水冷ユニットを採用しており、冷却性能と静音性を高いレベルで両立し、安定した操作性を実現する要注目の1台です。
5-3.Lepton WS4000TRX50A
32コア/64スレッドの「AMD Ryzen Threadripper 7970X」を標準搭載した「Lepton WS4000TRX50A」は究極のワークステーションモデルで、メモリはECCレジスタードのDDR5-4800を64GB(16GB×4)搭載しています。
標準構成では、「NVIDIA GeForce RTX 4060」搭載のビデオカード(VRAM:8GB)を採用していますが、カスタマイズによってさらに上位モデルを組み合わせることも可能。標準構成で100万円を超える、まさにプロフェショナル向けの一台ですが、「Cinema 4D」を本格的に使い込んでいきたいという方はぜひ注目してみてください。
6.まとめ
3DCG制作をはじめ、クリエイティブな作業を行うパソコンは比較的高いスペックを要求されますが、「Cinema 4D」も快適に操作するためには、ゲーミングPCをそのまま流用するというわけにはいかないスペックが必要となります。
特にメモリ容量が少ないと、安定した動作が期待できず、最悪の場合はデータ破損などの原因になってしまいますので注意が必要です。とはいえ、ゲーム用途で導入した高価なハイエンドビデオカードの性能を活かすことができるので、新たにゲーミングPCを購入する方は、クリエイティブな用途も念頭にして、パーツ構成を考えてみるのもよいでしょう。
本記事では、モーショングラフィックスの制作で定評のある3DCG制作ソフト「Cinema 4D」について、基本的に特徴や最適なパーツ構成を解説しました。高価なソフトなので、気軽にチャレンジするというのはちょっと難しいかもしれませんが、本格的に3DCG制作をしてみたい方はぜひ参考にしてみてください。
北海道の牧場で馬と戯れる日々を経て、パソコン雑誌やWEBニュース媒体の編集長を歴任する。Athlonに心奪われ、Xeonに絶対の忠誠を誓ったのも今や昔。現在は、編集業を中心に、原稿執筆からカメラマン、果てはアニメの宣伝プロデューサーまで、本業不明の生活を送る。ユーザーの心をがっつり掴む各種オウンドメディアを運営中。 プロフィールはこちら
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